続(挨拶)
9月26日(土)
お遍路再開8日目。
ここから88番のお寺はもうすぐ。このお遍路の旅の終わりを当然意識する。
泊まった栄荘のおかみさんに「不安かもしれないけど、みんな乗り越えてきたんだから大丈夫」と励まされ、お弁当を受け取る。
ありがとうございます。無事に結願できるよう、気を付けて行ってきます。
86番札所志度寺
まず栄荘のすぐ近くの志度寺へ。朝早くからお遍路さんがいる。ネコもいる。
ここには平賀源内のお墓がある。エレキテルやら土用の丑の日やらで名前は知っていたけど、平賀源内はこの辺(現在のさぬき市)出身だとは知らなかった。
近くには源内の資料館もあったが、開館時間までは時間があったので、今回は断念。
そして少し戻るが、前日に行けなかった85番のお寺を目指す。
ここは84番屋島寺と同じように、ポコッとした山の上にあるため、ケーブルカーがある。
ケーブルカーを設置するくらい人気があるのだろうか。不思議。
ケーブルカーも気になったが、大した距離ではないと聞いていたので、歩いて登る。
ときおりケーブルカーが登っていく音が聞こえ、(あれに乗れば楽だなぁ)と思うが、これも修行である。
高松市方面
汗をかいた先で、街が一望できる。
85番八栗寺
境内は結構広く高低差もあり、本堂から少し登っていくと宿坊もあるが、鍵が閉まっていて中には入れなかった。
納経をし、境内を一折歩き回り、また山を下りる。
山を下りたあたりで「お遍路さん、歩き?」とおばちゃんに声をかけられる。自転車ですと答えたら「これをどうぞ」と、よもぎ餅をくださった。
ここの山は男はつらいよのロケ地になり、渥美清さんたちも食べたという、よもぎ餅屋さんらしい。
気になっていたけど、お店は開店時間前で食べられないかなぁと思っていたところでの、お接待。ありがたくいただきます。
そして自転車へまたがる。もう戻ることはない、ここから先はただ進むだけである。
戻らなくていいというのは、気が楽である。
どんどん自転車を漕ぐ。
ついに88番のお寺の名前が交通標識に。
もうすぐである。
87番長尾寺
長尾寺へ到着。ここも参拝客が多くいた。
旅の人たちというより、地元の人がお参りにきている感じだった。
お寺は山の中や郊外にあることが多いが、ここは街の中にあり、賑やかである。
地元の人たちによって支えれているのだろう。そういうのがいいと思った。
すこし休憩し、自販機でエナジー系なジュースを飲み、体力回復。
そして次に目指すは、四国八十八か所、お遍路最後の88番札所である。
登る
88番は峠の向こう、山の中にある。
最後にふさわしく、中々の長丁場、そして登り坂である。
大変だけど、それも嬉しくもある。不思議である。
途中歩き遍路のご夫婦とも挨拶を交わした。顔が軽やかで、ここまで来たらもうすぐだという気持ちになる。
途中にダムがあり、遍路道の分岐点になる。
山道を行く方が険しいが、絶景らしい。
しかし自転車で登るのは不可能だと思われるので、ここまま車道を進む。
それに、この先に一つの目的地があるのである。
それがおへんろ交流サロンである。向かいには道の駅ながおがある。
ここの噂はチラホラ聞いていて、お遍路大使任命書なるものがもらえると聞いていた。
中は資料館のようになっており、お遍路の歴史や、お遍路さんが使っていた道具などが展示してある。
休憩もできるようになっており、お遍路さんはここで足を休める。
栄荘さんでいただいたお弁当をここで食べる。
わかめご飯の塩味、オレンジの酸味、疲れた体にとてもおいしゅうございました。
昨日、同じ宿に泊まっていた歩き遍路さんや、途中で抜かした歩きのご夫婦遍路さんともまた会う。
そして今回初の自転車遍路さんとも会いました。
おへんろ交流サロンの方に自転車で来たことを伝えたら、このような任命書をいただきました。
まだお遍路が終わってませんが、先にもらっちゃいます。
歩き遍路と自転車遍路それぞれの任命書があるみたいですが、自転車遍路は歩き遍路の10分の1くらいの数だそう。
もっと増えろ自転車遍路。
お腹も満たしたところで、出発。
自転車を漕いだり押したりしながら、坂を上っていきます。
お大師様の水
途中に湧水があるのも嬉しい。
お遍路では、こうした途中途中にある湧水に何度も助けられます。
標識も多くなってきます。
多分もうすぐ。もうすぐ。
少しずつ、少しずつ進んでいきます。
9月26日午後2時。
88番大窪寺到着。
ついに四国遍路最後の札所に到着しました。
自転車を止め、歩いて本堂へ。
ユックリと納経をする。
そして大師堂へ。
最後の納経をします。ゆっくり、そしていつもより大きめの声で。
学生時代、卒業式の前に2週間。徳島から愛媛県松山市まで。
そこで区切り、社会人に。
いつかお遍路の続きをやりたい、やりたいと思い続け、シルバーウィークで「これはもしかして、お遍路に行ける!」と踏ん切りをつけ、また松山市へ。
そして1週間、自転車を漕ぎ続け、ついに結願です。
大窪寺本堂
流石にお遍路88番目のお寺というだけあって、人が多い。
でもみんなやりきり、すがすがしい顔の人ばかり。
山門の前にはお土産物屋などのお店も多く、食事をするお遍路さんがいっぱい。
最後はここにお世話になった金剛杖を納める。私は自転車なので杖はないけれど。
境内では同じ宿だった方、先ほど会った夫婦遍路さんや自転車遍路さんとも再開。
お互いに健闘を称えます。
その方たちとベンチに座り、他愛のないお話。
結構途中であったというお遍路さん同士も多いらしく、「あそこで会いましたよね!」みたいな会話が聞こえる。
歩き遍路さんの白衣は肩の部分が擦り切れ、何度も補修したそうですがボロボロになっていました。
それそれ色んな思いがあってお遍路をして、そして名前も知らないようなお遍路さん同士が、こうして話し合えるってのは、とてもすごいことだと思いました。
私自身、なんとなくお遍路という文化に興味があり始めたというくらいのキッカケでしたが、きてよかったと思います。
大変だったけど、お遍路をしなければできなかった色んな体験ができました。
お遍路さんたちと「またどこかで会いましょう」と、それぞれまた別の目的に向かってお別れしました。
ある人は1番札所へお礼参りに、ある人は番外札所へ。
私は高松市へ戻り、そこから電車にのり、帰ります。
先ほど登ってきた山道を、自転車で一気にシャーと駆け下ります。
お遍路交流サロンにまた寄ろうと思いましたが、すでに閉館していました。
そして山を下り、町へ。
のんびりと自転車を走らせます。
知らない街でこうしてブラブラと自転車を漕ぐ。もう慌てる必要もありません。でも、もう終わりです。
なんとも楽しく貴重な時間で、そしてさびしい。
薄暗くなってきた頃、クロネコの営業所へ。
ここでずっとお遍路をしてきた自転車を、実家へ送り返します。
パンクも、目立ったトラブルもなく、よく頑張ってくれました。お疲れ。
松山からここまで445kmでした。
よく走ったなぁ。
自転車を預け、外に出たらもう暗い。
近くの駅から高松駅へ。
電車の時間まで時間があったので、讃岐うどんを食べました。
サンライズ瀬戸に乗り、東京へ。
4年前も同じサンライズ瀬戸に乗りました。暗闇の中をゴトンゴトンと進む夜行列車は、なんともいえない魅力があります。
これで私のお遍路はいったん終わりました。
あと高野山へ行ったり、1番札所にお礼参りがあったりと、どこでお遍路を終わらせるか自由。
でもきっと、また来たいと思っています。次は歩きで。