かつ(挨拶)
常磐線が9年ぶりに全線開通というので、乗ってきました。
富岡駅と浪江駅の間がずっと不通だったのが、ついに復旧し、震災で運休していた部分がすべて開通したとのことでした。数日前に知りました。
ならば乗ってみようと思った次第です。
青春18きっぷ片手に鈍行を乗り継ぎ、福島県へ入りいわき駅へ。そこから浪江町方面の電車に乗り込みます。
私が行ったのは開通翌日だったのですが、結構な乗客がいました。地元の人というより、鉄道ファンがほとんどでした。
震災から9年がたち、電車も開通ということで沿線の街の復旧も大分進んだのかなぁと思って車窓を眺めていると、違和感が。
電車は海沿いを走っていくのですが、海岸線のほとんどで護岸工事をやっています。そう、まだまだ工事をしているのです。それに砂浜が見えません。すべてコンクリートの壁を築いています。
不通だった箇所に入っていきます。駅ごとに見学にきた人たちがいて写真を撮っています。初日は歓迎する人たちがいたみたいですが、2日目は特にイベントがありません。
そして私は双葉駅に降りました。
双葉町という名前に聞き覚えがあったからです。震災で原発事故の影響で、住民が避難を余儀なくされた場所です。
帰還困難区域に指定されていましたが、今月になって一部が解除され、駅周辺などはだれでも立ち入ることができるようになったのです。
町がどんな様子が気になっていました。
双葉駅は新しく綺麗な建物です。ホームは1面の無人駅で、トイレは外にあります。売店や自販機等はなく、おそらくそれほど人が利用することを見込んでいないのでしょう。
駅前広場は広々としていて、人も結構います。おそらくほとんどが私と同じ見学者です。
パッと見た感じ、駅の周りには民家や店らしきものがあったので、少し散策してみました。
少し歩いて、猛烈な違和感を感じました。人がいません。人の気配が街に無いのです。
立ち入りが許可されたといっても、居住はまだ始まっていません。インフラも止まったままのようです。
色んな所を旅行し、人が少ない田舎も行きましたが、ここには本当に人の気配がないのです。当然初めての経験です。
民家も庭が荒れ、障子も破け、瓦も落ち塀も崩れたり傾いたりしています。
震災当時の状況を思い出しました。
商店街もありますが、シャッターがねじ曲がったり、ガラスが割れていたり、観葉植物が枯れているのも見えます。
自販機を見ると、当然すべて稼働していません。見本も色あせ、10年前に売られていたジュースがそのまま陳列されています。
郵便ポストがありましたが、ビニールでグルグル巻いてあり、使うことは出来ません。
病院やお寺も当然人がおらず、入ることができません。
車が何台も停まっているのを見つけ「作業をしている人がいるのかな?」と思ったら、タイヤの空気が全て抜けて潰れています。車内は埃だらけで、ナンバーが外されている車もありました。
一番驚いたのは、洗濯物が干してあったのを見た時です。おそらく、9年前からそのままなのでしょう。
よほど急いで避難したのでしょう。
時間が止まり、そのまま残されていました。
9年経っても復興はまだまだ途中でした。
でも色んな人たちの苦労があり、電車が通って、住民が元の生活に戻る第一歩が始まったのだと思いました。事故を起こした原発まで数キロの場所です。
そこに人が入れるようになり、電車が通ったことも大きな前進です。
2年後に居住が始まるように周辺の工事を進めているそうです。
まだまだ色んな問題があるでしょうが、早く住民の方が落ち着いて暮らせることを祈っています。