こういう熱い方は大好き(挨拶)
今年から考古学の授業をとり始めた。諏訪について研究するのに必要だと感じたからだ。
で、そのうちの一つの授業。先生は某博物館のえらい方。教授じゃないんだけど、博物館の最前線で活躍されている方だからまた違って面白い。
その中で、今日印象に残ったお話。
「皆さん、上高森って知ってますか?捏造事件があった所です」
そういえば昔、自分で土器を埋めて発見したって嘘ついた人がいたなぁ。
特に興味もなく、ズルい人がいるなぁとしか思ってなかったけど。
日本の人類の歴史は3万年くらいまでしか確認されていなかったが、この遺跡により一気に60万年前まで遡ることが出来たと。
「私の博物館でも、そこで見つかった土器を展示しました。2週間ぐらいでしたが」
この先生は信用性が薄いってことで展示はしてなかったそうだ。そしたら文化庁から苦情がきたり、ついには教科書にまで載ってしまったので展示に踏み切ったとか。
「私はその発見者に展示の依頼に行きました」
「そして展示してすぐに捏造が発覚したのです」
「なんだこりゃ!って思いましたね」
この捏造のショックって物凄いことで、120年かけ世界に冠たるにまでになった日本考古学の信用が一気に無くなったと。
先輩たちが積み上げてきたものが崩壊し、考古学を学ぶ学生も激減。生徒の親は「あんないいかげんな学問をやらせたくない」と言ったそうだ。
いい加減な学問。先生はその言葉を口にするだけで悔しいだろうな。
基本的に考古学って性善説で成り立っているそうだ。全部の発掘を監視するわけにもいかなく、そうしないと先に進めないと。
誰も見たことがないのだ。そういうものも出るんだと考えるしかない。
で、それらをぜーんぶ裏手にとってひっくり返してしまった。
ああ、そんな凄いことだったんだなぁ。
先生は一度も当事者の名前を出さなかった。
ただ悲しくて悔しいと。
「温故知新という言葉があります。古きをたずね新しきを知る。古きを知る段階で間違えてはいけない」
言っちゃうと、この先生は東京国立博物館の学芸員(ダヴィンチ展とかの企画責任者もした方)。
東京国立博物館っていえば大英博物館やらルーヴル美術館のような国の顔。正に日本を背負っている方。
言葉の重みが違うね。こんな先生の元で学べることに感謝。
実に面白い授業だ。学問はしっかり着実に正々堂々と。頑張りまっしょい。